坂越の牡蠣筏のしくみ|ロープに吊るして、海の中で育てる

10月もなかばになりました。坂越湾では、冬の出荷に向けて、筏に吊るした牡蠣が海の中で育っています。坂越の生かきは、今季は12月初旬〜中旬からのお届けを予定しています。
今回は、その牡蠣を育てている「筏(いかだ)」のしくみをご紹介します。海の上から眺めると、ただ浮かんでいるだけに見える筏ですが、その下の海の中で、冬にお届けする牡蠣が育っています。
牡蠣の筏とは|海に浮かぶ、牡蠣を育てる場所
坂越湾の沖を眺めると、海の上に、細長い格子のようなものがいくつも浮かんでいるのが見えます。これが、牡蠣を育てる筏です。上の写真でも、湾の中に筏が浮かんでいます。
筏は、長い棒を格子の形に組んだ枠を、海に浮かべたものです。たとえるなら、海の上に置いた大きな「物干し竿」のようなもの。洗濯物の代わりに、牡蠣をつけたロープを、この枠から海の中へ吊るします。
牡蠣は、海の底に置いて育てるのではありません。筏から吊るして、海の中で育てます。ですから、海の上に見えている筏は、牡蠣を育てる場所の「屋根」のような部分です。本当の仕事場は、筏の下の、海の中にあります。
坂越の冬の真牡蠣「坂越の生かき」は、この筏で育てています。12月から春にかけてお届けする殻付きの生かきも、むき身の牡蠣も、もとは筏の下で育った牡蠣です。

吊るして育てる「垂下式」のしくみ
筏から縦に吊るして育てるやり方を、「垂下式(すいかしき)」の養殖といいます。牡蠣をつけたロープを、筏の枠に結び、海の中へまっすぐ垂らします。ロープは波にゆられながら、海の中にとどまります。
下の写真は、筏の枠を上から見たところです。枠に結んだロープが、澄んだ海の中へ伸びているのがわかります。このロープの先で、牡蠣が育っています。
牡蠣は、自分で動いて餌を探すことはありません。海の中にとどまったまま、海水の中のプランクトンなどを食べて大きくなっていきます。吊るして育てる垂下式は、牡蠣を海の中に置き、まわりを流れる海水から餌をとって育つようにする方法です。
坂越湾では、種付けから半年ほどで、水揚げできる大きさに育ちます。育つ速さは、海の水の温度や餌の量によって変わります。同じ筏の牡蠣でも、年によって育ち方がちがうのは、そのためです。私たちは、海の様子を見ながら、牡蠣の育ちを確かめていきます。
垂下式は、昔から冬の真牡蠣を育ててきた方法です。坂越の冬の牡蠣も、この方法で育てています。

筏を浮かべる、坂越湾のおだやかな海
筏で牡蠣を育てるには、海そのものが大切です。筏は海に浮かべたまま、季節をこえて牡蠣を育てるからです。
坂越湾は、周りを山と島に囲まれた、波のおだやかな湾です。湾に浮かぶ生島(いきしま)は、潮の流れをととのえる役目をしています。写真のように、晴れた日の湾は、筏が並ぶ静かな海になります。
湾には、ふたつの方向から養分が流れ込みます。ひとつは生島の森です。生島の森は国の天然記念物で、長いあいだ人の立ち入りが禁じられ、守られてきました。もうひとつは、山のふもとを流れる清流・千種川(ちくさがわ)です。
牡蠣は、海水の中の餌を食べて育ちます。筏の下を流れる海が豊かであることは、牡蠣の育ちと深くかかわっています。坂越湾の海のことは、この日誌の1回目「坂越湾はどんな海か」でくわしく書いていますので、あわせてご覧ください。
筏から、加工場へ
筏の下で育った牡蠣は、船で筏から引き上げます。引き上げた牡蠣は、そのまま出荷するのではありません。
コンベアの上で形の整ったものを選び、殻についた付着物を落とします。そのあと、丸い専用のカゴに入れて、もう一度海へ戻します。これを「活かし込み(いかしこみ)」といい、ひと潮(約14日間)以上、海で過ごさせます。活かし込みの話は、この日誌の別の回であらためて書きます。
活かし込みのあとで水揚げした牡蠣は、坂越の加工場へ運びます。洗浄したあと、紫外線で殺菌した海水で24時間以上浄化し、梱包して出荷します。
こうして見ると、牡蠣が海で過ごす時間のほとんどは、筏の下にあります。筏は、坂越の牡蠣が冬の食卓に届くまでの、いちばん長い時間を支えている場所です。次の回からも、筏のまわりの仕事や加工場の様子を、写真といっしょにお伝えしていきます。
この季節の牡蠣
いまは、冬の出荷を前に、牡蠣が筏の下で育っている時期です。坂越の生かきは、今季は12月初旬〜中旬からのお届けを予定しています。公式通販では、春に加工した冷凍むき牡蠣(生食用)を、一年を通してお届けしています。