夜明け前の海|牡蠣の仕事が始まる時間

10月も終わりが近づき、坂越湾の朝は、日に日に明るくなるのが遅くなってきました。冬にお届けする牡蠣は、いまも筏の下で育っています。坂越の生かきは、12月初旬〜中旬からのお届けを予定しています。
今回は、牡蠣の仕事が動き出す「朝の海」のお話です。日がのぼるころの坂越湾の様子と、そこから加工場へとつながっていく仕事の流れをご紹介します。
日がのぼる前後の、坂越湾
上の写真は、坂越湾の朝です。山の稜線の向こうから日がのぼり、海の上にまっすぐな光の帯が伸びています。風のない日の湾は、鏡のように静かです。
坂越湾は、周りを山と島に囲まれた、波のおだやかな湾です。湾には、生島(いきしま)の森と、清流・千種川(ちくさがわ)の両方から養分が流れ込みます。牡蠣は、この海の中にとどまったまま、海水の中のプランクトンなどを食べて育ちます。
朝の海は、昼間とは表情がちがいます。まだ光が弱い時間、海は灰色から青へ、少しずつ色を変えていきます。筏の並ぶ沖も、はじめは影のように見え、日がのぼるにつれて、ひとつひとつの形がはっきりしてきます。
牡蠣の仕事は、天気や海の様子に左右されます。風が強い日や波の高い日は、海の上での作業がしにくくなります。だから朝は、まず海を見ることから始まります。空の色、風の向き、波の立ち方。その日の海の様子を確かめて、一日の段取りを考えていきます。

朝の光の中で、筏へ
坂越の冬の牡蠣は、筏から縦に吊るして育てる「垂下式(すいかしき)」という方法で育てています。筏の枠に結んだロープが、何本も海の中へ垂れていて、その先で牡蠣が育っています。
写真は、筏の枠を近くから写したものです。竹とパイプを組んだ枠に、ロープがしっかりと結ばれています。水の中をのぞくと、ロープのまわりに牡蠣や海藻がついているのが見えます。筏のしくみについては、この日誌の「坂越の牡蠣筏のしくみ」で詳しく書いています。
冬の出荷の季節になると、牡蠣は船で筏から引き上げます。引き上げた牡蠣は、船のクレーンで網ごと吊り上げて運びます。海の上の仕事は、明るさや潮、天気と相談しながら進めるものです。朝の早い時間に海が明るくなりはじめると、その日の海の仕事が動き出します。
引き上げた牡蠣は、そのまま出荷するわけではありません。コンベアの上で形の整ったものを選び、殻についた付着物を落とします。そのあと、丸い専用のカゴに入れて、もう一度海へ戻します。これを「活かし込み(いかしこみ)」といいます。期間は、ひと潮(約14日間)以上。殻に刺激を受けた牡蠣は、殻を直そうとして身をふくらませます。
つまり、ある朝に引き上げた牡蠣が食卓に届くまでには、海の上での何度もの朝が重なっています。引き上げの朝、活かし込みに戻す朝、そしてもう一度水揚げする朝。牡蠣の仕事は、こうした朝の積み重ねでできています。

海から、坂越の加工場へ
活かし込みを終えて水揚げした牡蠣は、坂越の加工場へ運びます。海の仕事と加工場の仕事は、別々のものではなく、朝からひと続きにつながっています。
写真は、海水を張った水槽に、殻付きの牡蠣を籠ごと沈めたところです。殻の表面に光が当たり、水の中で牡蠣の模様がよく見えます。水揚げした牡蠣は、加工場で洗浄し、紫外線で殺菌した海水で22時間以上浄化してから、梱包して出荷します。殻付きの洗浄や浄化、生かきの出荷は、坂越の加工場で行っています。
生のむき身の牡蠣は、11月中旬ごろから加工場での作業が始まります。水揚げしたあと、殻をむき、洗い、大きさごとに選別して出荷します。むき身の仕事も、坂越の加工場の大切な仕事のひとつです。
海で迎えた朝が、加工場の一日へと続いていく。坂越では、養殖から出荷までの仕事が、ひとつの土地のなかで進んでいきます。
いま、10月下旬の朝
10月下旬のいまは、冬の出荷を前にした準備の時期です。筏の下では牡蠣が育ち、今季の牡蠣は、今のところ順調に育っています。生かきの出荷が始まるのは、もう少し先のことです。
これから季節が進むと、朝の空気はさらに冷たくなり、日がのぼる時間もゆっくりになっていきます。そのなかでも、海が明るくなりはじめると、筏のまわりの仕事が始まります。
朝の海を見ていると、同じ景色の日は一日もないことに気づきます。光の色、雲のかたち、水面のゆれ。そのなかで、牡蠣は少しずつ冬に向けて育っていきます。次の回からも、筏のまわりの仕事や加工場の様子を、写真といっしょにお伝えしていきます。
この季節の牡蠣
いまは、冬の出荷を前に、牡蠣が筏の下で育っている時期です。坂越の生かきは、12月初旬〜中旬からのお届けを予定しており、公式通販でのご予約は11月9日から受け付ける予定です。公式通販では、春に加工した冷凍むき牡蠣(生食用)を、一年を通してお届けしています。