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牡蠣の種(稚貝)の話|小さな種が、半年で冬の牡蠣になるまで

筏の上に引き上げたロープに、殻付きの牡蠣が重なり合うようについている。後ろに竹とパイプを組んだ筏の枠と海が見える
筏から引き上げたロープ。たくさんの牡蠣が、重なり合うように育っています。

11月に入り、坂越湾の朝の空気は、少しずつ冷たくなってきました。筏の下では、冬にお届けする牡蠣が育っています。坂越の生かきは、12月初旬〜中旬からのお届けを予定しています。

今回は、牡蠣の「種(たね)」のお話です。冬に殻を開けて味わっていただく牡蠣も、はじめは小さな種から育ちます。その小さな種が、坂越湾の海のなかで冬の牡蠣になるまでを、写真といっしょにたどってみます。

牡蠣の「種」は、育てはじめの小さな牡蠣

牡蠣の養殖では、育てはじめの小さな牡蠣のことを「種(たね)」や「稚貝(ちがい)」と呼びます。野菜や花を種から育てるように、牡蠣の養殖も、この小さな種を海で育てるところから始まります。

「種」と聞くと、植物のような小さな粒を思い浮かべるかもしれません。けれども牡蠣の種は、植物の種とはちがい、もう殻をもった小さな牡蠣です。小さくても、海水のなかのプランクトンなどを食べて、少しずつ殻を広げ、身を太らせていきます。

上の写真は、筏から引き上げたロープです。ロープのまわりに、たくさんの牡蠣が重なり合うようについています。ここに写っている牡蠣も、もとは小さな種でした。それが海のなかで育ち、ひとつひとつが、ごつごつとした殻をもつ牡蠣になりました。

殻をよく見ると、牡蠣の殻は何枚もの薄い層が重なってできていることがわかります。牡蠣は育つにつれて、殻のふちに新しい層を少しずつ足していきます。殻のふちのひらひらとした形は、牡蠣が海のなかで大きくなってきた、その跡でもあります。

船のへりに、殻を開けた牡蠣が3つ並び、後ろに海が広がっている
船べりに並べた、殻を開けた牡蠣。

坂越湾では、半年で冬の牡蠣に

坂越湾では、種付けから半年ほどで、牡蠣は水揚げできる大きさまで育ちます。小さな種が、半年のあいだ海のなかで過ごし、冬にお届けする牡蠣になっていきます。

牡蠣が育つ速さは、水の温度や、餌になるプランクトンの量によって変わります。坂越湾は、周りを山と島に囲まれた、波のおだやかな湾です。湾には、生島(いきしま)の森と、清流・千種川(ちくさがわ)の両方から養分が流れ込みます。牡蠣は、この海のなかにとどまったまま、海水を取り込み、プランクトンなどを食べて育ちます。

写真は、船べりに並べた、殻を開けた牡蠣です。小さな種だったころには想像しにくいほど、身がふっくらとしています。同じ湾で育った牡蠣でも、殻の形や身の大きさは、ひとつひとつちがいます。

牡蠣は、自分で動いて餌を探すことができません。吊るされた場所で、流れてくる海水からプランクトンなどを取り込んで育ちます。小さな種が冬の牡蠣になるまでの半年は、そのまま坂越湾の海で過ごした時間でもあります。

筏の上で、殻を開けた牡蠣を指でつまんでいる。後ろに筏の枠と光る海が見える
筏の上で殻を開けた牡蠣。

筏から吊るして、海のなかで育てる

坂越の冬の牡蠣は、筏から縦に吊るして育てる「垂下式(すいかしき)」という方法で育てています。筏の枠に結んだロープが、何本も海のなかへ垂れていて、その先で牡蠣が育っていきます。筏のしくみについては、この日誌の「坂越の牡蠣筏のしくみ」で詳しく書いています。

ロープに吊るされた牡蠣は、海の底に置かれるのではなく、海のなかに浮かんだような形で育ちます。まわりを海水が通り抜けていくので、牡蠣は、流れてくるプランクトンなどを取り込みながら、少しずつ大きくなっていきます。

海のなかで過ごすあいだ、牡蠣の殻には、海藻や小さな生き物もついていきます。最初の写真のロープにも、牡蠣の殻のあいだに、海の生き物の色が見えます。こうした殻の付着物は、出荷の前に落としていきます。

写真は、筏の上で殻を開けた牡蠣です。後ろに見えているのが筏の枠で、この下の海で、牡蠣が育っています。種から育てた牡蠣が、同じ筏の上で冬の牡蠣として姿を見せる。牡蠣の仕事のなかでも、うれしい場面のひとつです。

種から冬の牡蠣へ、つながる仕事

種から育った牡蠣は、育ったからといって、そのまま出荷するわけではありません。冬の牡蠣になるまでには、いくつもの仕事が続きます。

牡蠣が育ったら、船で筏から引き上げます。コンベアの上で形の整ったものを選び、殻についた付着物を落とします。そのあと、丸い専用のカゴに入れて、もう一度海へ戻します。これを「活かし込み(いかしこみ)」といいます。期間は、ひと潮(約14日間)以上。殻に刺激を受けた牡蠣は、殻を直そうとして身をふくらませます。

活かし込みを終えた牡蠣は、あらためて水揚げし、坂越の加工場へ運びます。加工場で洗浄し、紫外線で殺菌した海水で22時間以上浄化してから、梱包して出荷します。小さな種から始まった牡蠣の一年は、こうして冬の食卓へとつながっていきます。

今季の牡蠣は、今のところ順調に育っています。種の付け方や、種を迎える時期など、海の上でのくわしい作業は、現場で確かめたうえで、この日誌であらためてお伝えします。次の回からも、冬の出荷に向けた仕事を、写真といっしょにご紹介していきます。

この季節の牡蠣

いまは、冬の出荷を前に、種から育った牡蠣が筏の下で大きくなっている時期です。坂越の生かきは、12月初旬〜中旬からのお届けを予定しており、公式通販でのご予約は11月9日から受け付ける予定です。公式通販では、春に加工した冷凍むき牡蠣(生食用)を、一年を通してお届けしています。

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